軒下増築の施工事例|セランガンバツデッキ材

軒下増築の施工事例|セランガンバツデッキ材

既存の住宅において、意外と活用しきれていないのが「軒下(のきした)」のスペースです。雨をしのぎ、直射日光を和らげるこの場所は、屋内と屋外をつなぐ絶好の緩衝地帯です。

今回の施工事例では、この軒下スペースにハードウッドの代名詞である「セランガンバツ材」を使用し、広々としたウッドデッキと目隠しフェンスを増設しました。腐食に強いハードウッドを選択したことで、将来的なメンテナンスの不安を解消しつつ、天然木ならではの重厚感ある佇まいを実現しています。
※ご紹介のセランガンバツは未掲載商品となります。

樹種と製品の本質:セランガンバツ材の特性

ウッドデッキ材には大きく分けて「ソフトウッド(針葉樹)」と「ハードウッド(広葉樹)」がありますが、今回採用したセランガンバツは、後者のハードウッドを代表する高耐久木材です。

水に沈むほどの高密度と耐久性

セランガンバツ(別名:バンキライ、イエローバラウ)は、インドネシアやマレーシアなどの東南アジア原産のフタバガキ科の広葉樹です。その最大の特徴は、圧倒的な硬さと重さです。気乾比重は約0.90〜1.00程度あり、水に入れると沈むほどの密度を誇ります。

この緻密な繊維構造により、水分や菌の侵入を許さず、シロアリなどの害虫に対しても極めて高い抵抗力を持ちます。防腐剤や防蟻剤といった薬剤処理を一切行わなくても、屋外の過酷な環境下で20年以上の耐久性が期待できるため、小さなお子様やペットがいるご家庭でも安心してご採用いただけます。

フェンス材としての剛性

今回はデッキ床だけでなく、境界線のフェンスにも同素材を使用しています。セランガンバツは繊維が強く剛性が高いため、薄い板材に加工しても強度が落ちにくく、フェンスの笠木(かさぎ)や横板として使用しても歪みが少ないのが利点です。構造体としての信頼性が高いため、台風などの強風を受ける可能性がある屋外フェンスには最適な素材と言えます。

歴史と文化的背景:世界が認める「ハードウッドの定番」

セランガンバツは、その耐久性の高さから、原産地では古くから橋梁、枕木、埠頭(ふとう)といった重構造物に使用されてきました。「水辺に強い木」としての実績は折り紙付きです。

日本における信頼の実績

日本国内のデッキ市場においても、セランガンバツは20年以上の輸入実績を持つ「ハードウッドの定番」です。イペやウリンといった他のハードウッドと比較して、供給量が安定しており、コストパフォーマンスに優れている点も長く支持されている理由です。公共施設や大型商業施設のボードウォークでも頻繁に採用されており、その信頼性はプロの建築家や施工業者の間でも揺るぎないものとなっています。

機能美と審美性:黄褐色の温もりと変化

「イエローバラウ」の名が示す黄金色

施工直後のセランガンバツは、明るい黄褐色(イエローブラウン)から赤褐色をしており、別名「イエローバラウ」とも呼ばれます。この明るく健康的な色合いは、軒下などの少し影になりやすい場所でも空間を明るく見せる効果があります。表面はハードウッドの中では比較的滑らかで、木肌のキメが細かいため、素足で触れた際にも硬質でありながらさらりとした心地よさを感じることができます。

ピンホールは天然の証

セランガンバツの視覚的な特徴として、稀に直径1mm程度の小さな穴(ピンホール)が見られることがあります。これは立木の段階で虫が入った痕跡ですが、内部に虫が残っていることはなく、強度や耐久性には全く影響しません。むしろ、このピンホールこそが人工木にはない「天然木の証」であり、セランガンバツ特有の景色として親しまれています。

シルバーグレーへの経年変化

屋外で使用する天然木は、紫外線や雨の影響で徐々に退色し、最終的には「シルバーグレー」へと変化します。セランガンバツも例外ではありませんが、腐って色が抜けるのではなく、表面のセルロースが変質して銀白色に輝くような変化を見せます。このシルバーグレー化したデッキは、庭の植栽の緑や、家の外壁と美しく調和し、新品の時とは異なるシックで落ち着いた景観を作り出します。

空間デザインとの調和:軒下空間の再構築

「内」と「外」を繋ぐ中間領域

既存住宅への増築において、デッキとフェンスをセランガンバツで統一したことは、デザイン的に大きな意味を持ちます。

  • リビングの拡張: 掃き出し窓の高さに合わせてデッキを設置することで(フラットサッシ仕上げ)、室内と屋外の段差が解消されます。視線が外へと抜けるため、リビングが実面積以上に広く感じられます。
  • プライバシーの確保: 軒下デッキは道路や隣地からの視線が気になりやすい場所ですが、同素材のフェンスを設けることで、圧迫感なくプライバシーを確保できます。セランガンバツのフェンスは木の温かみがあるため、無機質なアルミフェンスのような閉鎖感がありません。
  • 和洋を問わない汎用性: セランガンバツのクセのない木目と色合いは、モダンな住宅だけでなく、和風建築の「濡れ縁(ぬれえん)」の延長としても違和感なく馴染みます。

メンテナンスと永続的価値

「腐らない木」のコストメリット

ソフトウッド(杉やSPF材)でデッキを作った場合、数年ごとの防腐塗装が必須となり、それでも10年程度で作り替えが必要になるケースが少なくありません。一方、セランガンバツは無塗装のままでも20年以上の耐久性を誇ります。初期費用はソフトウッドより高くなりますが、ランニングコスト(塗料代や塗り直しの手間)や、将来の解体・再施工費用を考慮すれば、長期的には非常に経済的な選択と言えます。

ささくれへの対処と日常管理

ハードウッドは繊維が硬いため、経年で「ささくれ」が生じることがあります。メンテナンスとしては、5~10年に一度程度、サンドペーパー(やすり)で表面を軽く研磨することをお勧めします。これだけで滑らかな手触りが復活します。また、汚れが気になった際はデッキブラシで水洗いするだけで十分です。気を使わずにタフに使い倒せることこそ、本物のハードウッドデッキの魅力です。

まとめ

今回の施工事例では、既存住宅の軒下というデッドスペースになりがちな場所を、セランガンバツ材を用いることで、家族が集う豊かな「屋外リビング」へと再生させました。

床とフェンスを同じ高耐久木材で統一することで、機能的な耐久性を確保するだけでなく、空間全体に統一感と重厚感が生まれました。雨の日も晴れの日も、変わらぬ強さで暮らしを支えてくれるセランガンバツデッキ。それは、住まい手にとって「庭で過ごす時間」をより身近で、特別なものに変えてくれる確かな投資となるはずです。

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